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村上かつら『Hatch』1巻発売記念インタビュー!
村上かつら先生にとって初のフィールコミックス
 『Hatch』1巻が好評発売中です!
 発売を記念し、村上先生にインタビューを実施しました。
 妙齢の婚活女子に突き刺さるこの漫画は
 いかにして生まれたのでしょうか?
 定価980円
定価980円   
 
 
 【あらすじ】
 厳しすぎる母のもと、28歳にして未だ恋愛経験がない宮下のえみ。
 生涯独身だった叔母の葬儀をきっかけに「結婚したい」と強く思うが、
 なかなか気持ちに行動がついていかずーーーー。
 恋を知らないのえみが人生に風穴を開けんとする、奮闘の第1巻!
 
 
【Hatchについて】
編集部(以下、編):『Hatch』第1巻発売おめでとうございます! 
           主人公・のえみは家庭環境のせいで恋に奥手......という女の子ですが
          このキャラクターはどのようにして生まれたのでしょうか。
村上:女性誌で描くチャンスがあったら
   「長過ぎた春」を描こうと思っていました。
    30歳を前にしたカップルが、結婚するか別れるか、決断を迫られるような話です。
   が、担当さんに
   「わたしはまだ若いので、倦怠期?みたいな気持ちはあまりピンときません。 
    もっと初々しい恋愛だったらネタを提供できるかも」
   
   と言われて、それに乗っかろうと思い(笑)
     「30歳直前」と「結婚」は活かしたまま
    主人公の設定を、ぐるっと方向転換しました。
    2009年、連載開始2年前のことです。
   同じ頃、編集部の方とお話しする機会があって、
   「結婚を書きたいなら、背後にある母娘関係を調べると面白いよ」
       とアドバイスして下さいました 。
   それで、女性を取材する時は必ずお母さんとの関係もヒアリングしました。
   いま、書店などで、母娘関係にまつわる本がたくさん並んでいるのをみて
   編集部の方の先見の明に驚いています。
この時流に乗って、より多くの方に手に取っていただけたら嬉しいですね。
編:のえみと親友たち、妙齢の女子3名が三者三様に「婚活」に奮闘していますね。
  特に紘香の婚活マシーンっぷりは勉強になりました…!
  婚活中の女性たちに取材などされたのでしょうか?
村上:28歳前後の女性にたくさん会って、結婚観について
   お話を聞かせていただきました。
   
   中でも、
    積極的に「婚活」をして
    理想の結婚生活を叶えたグループの話
   は本当に面白くて、 目から鱗がたくさん落ちました。
   彼女たちは、もっと若い時分から結婚を意識していました。
   のえみとは真逆の、攻めの婚活です。
   紘香の登場シーンが少ないので、せっかくのエピソードを
   漫画の中で活かしきれていないことが残念です。
  
  
編:1巻分描いてこられて、印象に残っているシーンやセリフはありますか?
 
 
この漫画は、
 「婚活」や「結婚」を通して、「世間」とどう関わっていくかを
 迫られること(の息苦しさ)がテーマです。
 早い段階で、「世間」というワードを投げておきたかったので
 このシーンで、まずは、錨を下ろした! という手応えがありました。

 1巻を通して、このセリフが、一番周囲からの反響がありました。 
 特に、なぜか既婚者から、「なるほど!」「新鮮!」
 という感じのリアクションがたくさん返ってきました。
このセリフも、取材で得られた、生の声を元にしています。
  
  
 
 描き文字です。読みにくいですね……(笑)
 
 「そうでもないと安心していた男子が
 実はモテると知った時の軽ヘコみ(5秒で回復)」
汚い字でちょこちょこっと書いただけなのに
 脱稿してから、アシスタントさんが、
 「あのセリフすごいわかります~~」って、
 言ってくれたのが嬉しかったので、ここに入れました。 
  
 
 
 いつも、プロットを作るとき、
 「ここで、のえみが自分から……は、行かないか~」と
 消極的な主人公ならではの動かしづらさと戦いながら描いているので
 のえみが今の性格になる前の、中学時代の回想シーンは
  描いていて楽しかったです。
編:描きやすいキャラ、また、反対に描くのが難しいキャラはいますか?
  その理由もお教えください。
村上:描きやすいのは小夏です。 
    最初に考えた、「長過ぎた春」は、
   小夏のような女の子を主人公にした話だったので。
   反対に、描くのが難しいのは、のえみです(笑)。
   理由は、一つ前の質問でお答えしたとおりです。
編:コミックス1巻はとても可愛い仕上がりだと思います!
   装丁についてこだわられた点や、お気に入りのポイントがあればお教え下さい。
村上:装丁に関しては、ただただデザイナーさんに感謝するばかりです。
   カバーイラストは、一見、花嫁衣装に見えて
   よく見ると(白い抜きの)喪服になっています。
   
   カバーの裏から、うっすら透けて見えるピンクのドットが
    かわいくて気に入っています。 
   絶妙な、色の匙加減がポイントです。印刷のマジック。
   ぜひ、お手に取って、カバーを裏返してみてください。
【漫画家生活について】
編:デビューから今までを振り返られて、いかがですか?
村上:デビュー当時、担当さんに
   「絵は、放っておいても上手くなるから!」と言われたけど、
   そんなことはなかった(笑)
  
編:プロット、ネーム、下描き、作画(ペン入れ・トーン貼り…)、
  カラーなど、漫画をつ くる上で、お好きな作業とその理由をお教え下さい。
村上:どの作業にも、あまり差はないです。好きです。
   そして同じくらいつらいです。
 編:逆に、大変と思われる作業とその理由をお教えください。
村上: 完成直前に、ネームをまとめて画稿に書き入れる作業があるのですが、
   なぜか毎回、ここで異常に時間を食うので困っています。
  
編:お仕事の気分転換はどんなことをされていますか?
  お気に入りのおやつなどはありますか?
村上:作業中の楽しみはコーヒーです。
編:お好きな漫画、小説などをお教えください。
村上:小学生の頃に読んだ、「はだしのゲン」。
   人生で、最初に衝撃を受けた漫画だと思います。
編:お好きな映画やテレビ番組がありましたらお教えください。
村上:夕食のとき、「探偵ナイトスクープ」(録画)をみんなで観てます。
編:村上先生が今はまっているもの、人、場所などあればお教えください。
村上:この夏は、盛岡冷麺。
   好きな具は、水にさらしたスライス玉ねぎです。
編:最後に、フィーヤン読者の皆さんへメッセージをお願いします!
村上:のえみの「初恋」を通して、
     読者のみなさんに、「すべてが初めて」だった時の、
   不安や喜び・懐かしい気持ちを追体験してもらえたら嬉しいです。
   
   不器用な主人公が、手探りで自分の世界を広げていくところを、
   どうぞ見守っていてください。
編:ご回答ありがとうございました!
  『Hatch』1巻の続きはフィール・ヤングで連載中です☆
  のえみは“結婚”で救われるのでしょうか……?
  今後の展開もお楽しみに!
(取材:2012年9月某日)