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やまじえびね インタビュー!
やまじえびね先生の「鳥のように飛べるまで」が発売となりました!
やまじ先生のバレエへの愛が伝わってくる渾身の作品となっています。
そこで!! やまじ先生に単行本の話からバレエの話まで、
インタビューを行いました
定価980円
〈作品について〉
編集部(以下、編):今回、バレエを題材にした漫画ですが、
このお話を描こうと思ったきっかけを教えて下さい。
やまじ:以前描いた『キュールとカルト』のような作品を
また描けないかと考えていました。
主人公はキュールのような踊る人がいいなと思い、
近所の図書館でダンスの本棚を眺めていて、何気なく手にした本の表紙が
ジョルジュ・バルビエ(フランスのイラストレーター)の描いた
ニジンスキー(ロシアのバレエダンサー)の絵だった。
これにすっかり見とれて「バレエダンサーか~いいなあ~」と
思ってしまったんです。これがきっかけです。
編:バレエ(バレリーナ、バレエダンサー)に興味を持ったきっかけはなんですか。
やまじ:子供の頃から踊りの上手な人を見るのが好きでした。
20代前半の頃フラメンコダンサーのアントニオ・ガデスに夢中になり、
その流れでバレエも何度か観に行きましたが、
その後興味はストリートダンス系に移ってしまった。
ここに来てバレエに光が当たったのは
やっぱりバルビエの絵を見たことでしょう。
自分でも思いがけないことで、絵の力ってすごいなあと感じます。
編:作中でバレリーナ、バレエダンサーの動きが想像できるほど
丁寧な描写で描かれていますが、描く事で楽しかった点や
逆に苦労された、注意された点はありますか。
やまじ:「バレエダンサーらしく描く」ことに、とにかく神経を使いました。
頭のてっぺんからつま先まで注意することだらけ。
だいたいわたしの描く人は作者に似てちょっと猫背気味なので
そこから直す必要がありました。
楽しいと感じる余裕はほとんどなかった!…まあそれはいつもですけど。
でもバレエを観る楽しみができたのはこの作品のおかげです。
踊るバク。

練習中のミチル。
編:読者の方から、ミチルとバクが踊ったロミオとジュリエットの
ミチルの衣装が素敵という声をいただいたのですが、
あの衣装はやまじ先生のオリジナルで考えられた衣装ですか。

やまじ:わあ、嬉しいです!
でも、いえ、あれはオリジナルではなく、
英国ロイヤル・バレエ団の衣装を参考にしています。
きっとシェイクスピアの時代の服装をもとにデザインされたものでは?と想像します。
編:執筆中はバレエ公演をよく観に行っていらっしゃったとの事ですが、
特に良かった演目、また漫画の参考になった演目はありますか?
また、やまじ先生のお好きな演目もあわせてお聞かせ下さい。
やまじ:世界中のトップダンサーが集結する3年に1度の「世界バレエフェスティバル」が
ものすごかった!まずこれを観に行ってはまってしまった。
すでにその回を描き終わったあとでしたが、
英国ロイヤル・バレエ団の『ロミオとジュリエット』を観ることができたのは
嬉しかったです。この作品は音楽もすばらしく大好きなのです。
そしてやっぱり名作『白鳥の湖』が好き。
それからモーリス・ベジャールの『ボレロ』、『若者と死』含め
ローラン・プティの作品はとても好きです。マンガには演技の方より
カーテンコールの雰囲気とか、そういうところが参考になったかなあと思います。

編:今回収録されたものの中で
特に気に入っているシーンを教えていただけますか。
また、毎回の扉絵のなかで、「これは!」と思うものがあればあわせてお教え下さい。
やまじ:え~ その質問は難しい!
力の入れ具合や思い入れは全ページ一緒なので…。
扉絵は第1話のカラー、第5話、最終話あたりが個人的に好きかな…。

第1話 扉

第5話 扉
最終話 扉
編:バクが静養していた叔父さんの住まいがとても素敵だったのですが、
何か参考にされた場所などありますか。

やまじ:フランスの某所にある、まるでお城のようなお屋敷を参考にしました。
広~いお庭のあるお家がイメージだったので。
編:作中ではタロットカードを効果的に使われていますが、
占いなどにも興味があるのですか。
やまじ:大きな声では言えませんが、占い、大好きです。
毎朝、毎週、毎月、毎年、数カ所のお気に入りの占いをチェックします。
ん~こう言うとなんかしょうもない人みたい(汗)。
ただ、読んでもすぐ忘れちゃうんで。
タロットや手相の勉強をしたこともありますが、いかんせん覚えが悪く、
占うことはできません。
編:タイトルに込めた思いをお聞かせ下さい。
やまじ:男性ダンサーなら高くジャンプできることは強力なチャームポイントだし、
演目の中でも見せ場です。女性ダンサーならしばしば白鳥や精霊など、
人間ではないものの表現を要求されます。
バレエダンサーの「もっと高く」「もっと軽く」「もっと自在に」踊ることを
目指すという一面を「鳥のように」という表現に重ねましたーーーというのは
あえて言葉にしてみればというもので、タイトルはいつも思いや理屈でなく
直感でつけます。
というのも連載1回目を描く時点ではこの先どんな展開か、
どんな話になるのか自分でもわかっていないので、どんな話になっても
対応できそうな言葉を適当に選んで、ぱっとつけるんですよ。
タイトルに限らず、読者の皆さんはいつもかなりいろいろ
深読みしてくださいますが、作者は(わたしは)意外に?申し訳ないほど
アバウトなところが多いのです…。
〈やまじ先生のマンガ製作について〉
編:プロット、ネーム、作画……と、マンガが完成するまでの各行程で
一番お好きな、または楽しい作業はなんですか?
やまじ:わたしはいきなりネームと絵コンテを同時に始めますが、
この作業がつらくも一番楽しい作業ですね。
編:作画中、BGMは流されますか?もし、あればお好きなものをお聞かせ下さい。
やまじ:ネームから完成までずっと音楽が流れています。ソウル、ファンク、
R&B、懐かしのディスコミュージック…。
ブラックミュージック特有のノリとフィーリングがたまらなく好きです。
編:作業中の気分転換やリフレッシュ方法などありますか?
やまじ:ネームに詰まったら音楽を変えるとか水を飲むとか、
その辺をうろうろしたり庭に出たり。
作画に入ったら気分転換を図る時間も惜しいので
机につきっきりですが、どうしても集中できなくなったときは
15分寝る、これが一番です。
編:最後に読者の方へメッセージをお願い致します。
やまじ:はじめに、連載中応援してくださった読者の皆さん、
ありがとうございました!
バレエを題材に描くなんて、自分でも思いがけない展開になりましたが、
わたしなりに絵で、バレエの美しさを表現しようと力を尽くしました。
難しいことはいっさいありません。
今回は特に絵を見て楽しんでいただければ、夢の世界を味わっていただけたら、
本当に幸せです。
巻末には7ページのイラストギャラリーもついています。
どうかどうかこの本をよろしくお願い申し上げます!!
やまじ先生の最新作はフィール・ヤング12月号で読む事ができます!
(2010年11月某日取材)