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三原ミツカズ『死化粧師』⑦発売記念インタビュー
定価980円
三原ミツカズ先生が描く
エンバーマー物語『死化粧師』。
2002年の第1回から11年にわたる長期連載となりました。
母を亡くしたときのトラウマを抱えながら、
死者をおくる技術者として遺体に向き合ってきた心十郎。
彼が選んだ未来とはーーー?
完結巻発売を記念して、三原先生にインタビューを敢行!
——完結に寄せて——
編集部(以下編):三原先生、『死化粧師』完結の7巻、発売おめでとうございます。
三原:ありがとうございます。
『死化粧師』は私にとって特に思い入れのある作品なので、無事完結できて本当に嬉しいです!
編:そもそもこの作品を描こうと思ったきっかけは?
三原:幼なじみの親友の自死です。夏でした。遺体の状態が良くなくて…。
事情があって葬儀は私がさせていただいたのですが、
最良の形で送り出してあげられませんでした。
その時は茫然自失で後からとても後悔したんです。
しばらくして新聞でエンバーミングの記事を読みまして、もっと早く知っていれば…
という思いから『死化粧師』が始まりました。
編:描き上げた今、どんなご心境ですか?
三原:いやきつかったなあ…と。
マンガではなるべくわかりやすく読者さんに一番伝わる方法で、簡潔に描いています。
実際はエンバーマーさんへの取材、資料の取り寄せ、死についての本など、
技術と同時にグリーフケア(悲嘆の回復)の重要性を調べる度、
自分ができなかったことの無力さを何度も思い出して、心理的にかなりヘビーでした。
死化粧師はエンバーミング技術の有効性はもとより、
残された者がどう乗り越えていくかに重きをおいて、
くれぐれもオカルト的にならないよう、とても気をつかったのもあります。
それまではエンバーミングは興味本位に描かれることが多く、
どこの葬儀社さんも取材を受けて下さらなかったんです。
1巻が出て、やっとご協力いただけた時は本当に嬉しかった。
完璧な技術を知ったのは3巻あたりからで、
それまでは施術台のどちらに頭を乗せるのかすら知らなかったのです。
(ちゃんと意味があります)
何て無謀だったんだろう(笑)。
▲集めるのに苦労した死化粧師資料を一部公開です。
編:描き上げてみて、ご自身に近いところを持つキャラクターはいますか?
三原:イケメン要素を抜いた心十郎でしょうか。
今にして思えば、エンバーミングをした後に人肌が恋しくなるという設定は、
何話もマンガの中でエンバーミングしながらも
実際の親友には何もできなかったという無念さを表したかったんだろうなー
と思います。
ただ、執筆中に父が亡くなって吹っ切れまして、
心十郎と父親の確執も裏テーマだったことに気づきました。
編:最終巻のカバーについて、通常の巻と違うところがいくつかありますね。
三原:個人的に尊敬しているデザイナーさん「note」の芥陽子さんの
素晴らしいアイデアがちりばめられています。
真っ白にしたいね、というのは満場一致でカバー下の表紙も今までと違うんですよ。
全て最終回のイメージに合わせた色調になっています。
「意味のないルーティンはしない」
という言葉に感激して喜んでそれに乗っかり、私も楽しく描かせてもらいました。
▲銀箔×銀インクの豪華装幀!!
——日常生活について——
編:最近読んだ書籍やまんが、映画、テレビ番組などお気に入りのものがあれば教えてください。
三原:うーん、マンガはいただいている献本が十分面白いのでそれと…
あと、高橋葉介先生の特集本を読みふけりました。
最近は昭和の事件が興味深くて映像、文章問わず見ています。
テレビはここ数年全く見てなくて、たまに外で目にすると
ネットや新聞とでは全く切り口が違うのに驚いてます。
編:連載を終えた今、行ってみたい場所ややりたいことはありますか?
三原:言うだけは自由ってことで、短い動画を作ってみたいです。
あとはミシンを踏みまくりたい。
リメイクにはまって、昔の仕立てのいい古着を貯めこんでいるのです。
あとは部屋の模様替え、結構大掛かりにやるタチでして、
ネーム(をする)部屋を作ったのですが…
ずっと敬遠していたロココ風というのにチャレンジしてみようと
壁を塗り替えて照明を取り付け家具を設置。
までしたのにやはり性にあわなく、いやむしろ私自体が合わない(笑)
あれはアントワネットがいるからいいんですね。
あの部屋を何とかするのと、今後描きたい話の資料集め。
です。
▲死化粧師7巻にサイン入れ最中
(※編:今巻ではなんと120冊のサイン本を描いていただいています!)
編:最後に読者のみなさんへのメッセージをお願いします。
三原:療養や色々、なんだかんだと途切れがちな拙作を読んで下さる皆様、
本当に本当に感謝しています。
今までは真のエンターテイメントとはとても言い切れない作品ばかり描いてきましたが、
今後は読者さんが楽しんで下さるようなものを描いていきたいです。
色々吹っ切れた今後の三原もなにとぞよろしくお願いいたします。
いつもありがとう。
編:ありがとうございました!