大人気作『うさぎドロップ』に続いて
宇仁田先生がフィーヤンから放つのは、

仕立て職人物語『いとへん
』。

古びた仕立て屋を舞台に、職人の師弟による糸と布の手仕事を
丁寧かつあたたかに描きます。

単行本化を記念して、先生に創作秘話を語っていただきました!


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定価 724円

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書店用POP



編集部=編

編:シリーズ連載として始まった「いとへん」ですが、この物語は以前から描きたいテーマだったそうですね。

宇仁田:デビュー前に投稿していた頃から男子の仕立て屋さんのお話をやってみたいな
    という思いはありました。
    ただ、投稿していたのもデビューしたのも青年誌だったので、当時の自分の力量で
    そういうものを描くのは難しいだろうなと思ってプロットさえも出さずじまい…。
    その後も掲載誌やタイミングがうまく合わずに、ずっと心の中にしまったままでした。



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▲うちのミシン。
ミシンはなるべく具体的な絵にしたかったので、連載始まる前にネットオークションで手に入れました。
今ではこちらをメインで使っています。



編:もともとのお勤め先が服飾関係でらした上、
  今回は取材を重ねてお描きになりましたが、実際に活かしたエピソードなどはありますか?

宇仁田:勤め先は既製服を扱う会社だったので直接まんがの内容との関わりはありませんが、
    その会社に勤めているときに繊維業界、アパレル業界のことを表す
    「糸偏(いとへん)」という言葉を知りました。
    
    当時おもしろい言葉だなーと何か心にひっかかるものがあって…、
    今回タイトルで悩んでいたときにそれを思い出して「いとへん」にしました。

    取材はメンズとレディースの仕立て屋さん、洋服のお直しをされている方、
    ボタン屋さん、ミシンの修理屋さん等でお世話になりました。
    
    みなさんお忙しいのにとても熱心にお話をしてくださったり
    お仕事の様子を見せてくださったり…。
    それはもう、作品に活かしたことだらけですよ。

    職業は少しずつ違いますが、仕事への取り組み方や
    日頃から感じていらっしゃることなどで共通点が結構ありまして。
    その辺りもかなり参考にさせていただきました。


編:なるほど。
  情に厚いけれどもぶっきらぼうなヒラタさんに、
  就職難民なりかけだった元気新人ななこ。この2人にモデルはいますか?

宇仁田:特にモデルはいなくて、設定に合わせて考えていった感じです。
    前作『うさぎドロップ』の設定が重かった反動で、
    ふまじめにならない程度に能天気なキャラクター
    出したかったというのはあります。



編:好きなシーンや扉絵などはありますか?

宇仁田:ななこが無駄に動くので、全身の絵を描くのが特に楽しかったです。
   (これは全身ではないですが)P71の1コマ目とか…P166の1コマ目とか…。


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▲P71の1コマ目

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▲P166の1コマ目



  扉絵で好きなのは4話と6話ですね。
  4話の扉絵は2人の関係性みたいなものがよくわかるので気に入っています。


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▲4話の扉絵

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▲6話の扉絵

  

  同じ理由でP127の1コマ目も。

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▲P127の1コマ目


編:宇仁田さんご自身、最近お作りになった手作りの小物や洋服はありますか?

宇仁田:なかなか時間もとれないので思うようには進んでいませんが、
    地味服を縫ったりしています。
    
    とにかく実用的で体に合っていて洗濯機でがんがん洗えるもの。
    
    最終話に出てきたななこが作っているようなパンツは、
    少しずつ型紙調整しながら3本作りました。

    今その型紙が自分の脚にちょうどいい感じなので、また作ろうと思っています。
    iPhoneがきれいに納まる丸いポケットがついていて、座り仕事も楽で、 
    縫うのも楽で、ウエスト総ゴムのくせに結構スッキリしたラインです。
    (まんが家に最適!)


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▲まんが家パンツ

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▲息子の入学式用のスーツのジャケット(作りかけ)


編:すごくかわいいですね! そしてかなり実用的!

  さて、カバーイラストでは、
  ななこ&ヒラタのイラストのバックに小物を描いていただきましたが、
  すごく作品の朗らかでかわいい雰囲気に合っていますね!

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▲「いとへん」カバーと帯



宇仁田:ありがとうございます!
    デザイナーさんとの打ち合わせで「バックはテキスタイルっぽいイメージで」
    ということになったので、輪郭線なしのやわらかい感じで描いています。
    
    とにかくたくさんの洋裁道具やお花を描いて、
    それをデザイナーさんにうまいこと配置していただきました。


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▲本編にでてきた円形の巾着の試作品
右が完成品で左が思案中のもの(ななこが最初に作ったもの)。
↑どちらもまんがと同じつくりです。


編注】コミックスには作り方を描き下ろしで収録しております!


編:最近ハマっているものはありますか?

宇仁田:去年植えた黄色いにんじんの種が落ちて
    勝手にうじゃうじゃ生えてきたので、
    間引いて食べたり雑草抜いたりして育てて(?)います。
    すごい数です。



編:最近観た映画やテレビ番組、本や漫画なのでお気に入りのものはありますか?

宇仁田:アニメ「ピンポン」
    漫画も当時雑誌で読んでいて単行本が出たらすぐ買って…
    という感じだったので、色がついて動き出したらもうほんと
    びっくりするぐらい気持ちがはしゃいでしまって。

    1話目見たらすぐ単行本出して来て全部読み返しました。
    そしてうちに単行本あるのに、夫が新しく出た大判のものも買ってきました。
    改めて「ピンポン」熱いですねー。
    
    あと「SHERLOCK」のシーズン3
    人形劇「シャーロックホームズ」
    の続きを異常なぐらい楽しみに待っ ています。


編:規則正しい生活を送られている宇仁田さんですが、コツはありますか?

宇仁田:どうしてもその日に出さなければいけない原稿がある場合は別ですが、
    決まった時間に仕事を切り上げることでしょうか。
    
    その日どうがんばっても提出できないものなら無理せず寝て次の日やります。
    そのほうが早いので。
    
    わたしの場合は単に同じ時間に寝起きしたほうが、
    体が楽だからやっている感じですねえ。


編:見習いたいです…!
  最後に、フィーヤン読者のみなさんへメッセージをお願いします。

宇仁田:縫い物好きな方にも苦手な方にも読んでいただけたらすごくうれしいです。
    装丁は、特に縫い物好きな方に喜んでいただけそうな素敵な感じに
    デザイナーさんが仕上げてくださいました。
    あまり見た事がないタイプですよ。

    フィールヤング6月号には「いとへん」のピンナップも載っていますので
    こちらもよろしくお願いいたします。





 ありがとうございました!


(2014.4.24)