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鳥野しの「手紙物語」インタビュー
『オハナホロホロ』から9ヵ月、
ついに新作『手紙物語』を刊行いたしました!
テーマは手紙。
現代ファンタジー、英国歴史ロマン、昭和人情もの、謎解き、SFと、
ジャンルも時代も異なる5つの作品を描きました。
どのお話も極上の出来で、まさに〝無人島に持っていきたい短編集〟。
発売直後から評判の高いこの1冊、是非どうぞ♪
<B6判>本体価格680円+税
編:新作「手紙物語」発売おめでとうございます。
鳥野:ありがとうございます。
他誌での連載でしたが、休刊に伴って路頭に迷う所だった原稿を引き受けて下さり、
祥伝社さんおよびフィール・ヤング編集部さんには感謝しております。
また、他社での単行本化をご快諾くださった集英社さんにも感謝を。
編:鳥野さんはデビュー作『オハナホロホロ』が連載となり、6年間それが続きました。
ですので『手紙物語』は2作目の単行本になるわけですね。
鳥野:オハナの連載は基本2回載って1回休みペースだったのですが、
「手紙~」はそれより早いペースで描くことになり、その点では毎月綱渡りでした。
毎回読み切りで、キャラも話も設定も1から考えないとならないのに……!
編:いろいろなお話をお描きになりましたが、
どのお話が描いて楽しかったですか?
また、難産だったお話はどれですか?
鳥野:わたしはわりと、しんどかった事は忘れがちなのですが……。
連載1話(単行本の4話)の「シュレディンガーの恋人」は、
とにかく「話がややこしい!」というので「1回読んでスッとわかるように!」と
担当の鹿さんのリクエストもありまして、もうどこを何回直したか覚えていないくらい、
ネームの修正が大変でした!
あととにかく自分の引き出しの無さを痛感しました。
歴史とか文学とか、もっと学生時代に興味を持って勉強しておけば良かったです。
編:うふふ、でも単行本読者からは「読み応えがある!」と好評ですよ。
「シュレディンガー~」でオークション会場の内装の参考にした、「三菱一号館」。
むかしの建築は贅沢ですよね。
編:鳥野さんならではのあたたかみと、美しい筆致が楽しい単行本カバーですが、
お気に入りのポイントがあれば教えてください。
鳥野:ありがとうございます!オハナ~とは違うデザイナーさんにお願いすることになって、
直接話し合ってカバー案を出し合ったのですが、
その打ち合わせがとにかくすごく楽しかったんです。
なので恐らく、絵にわたしの苦しみが現れていないのがいいんじゃないかと……。
あと表4の猫は昔うちにいた猫です。
レイアウトで入らない位置に描いてしまったので見えませんが、
原画では窓の外の木の枝に「日雀」がとまってます。2羽。
猫。表4のモデルになったのはこの子の先代なのですが、模様はそっくりでした。
編:フィール・ヤングで執筆中の新シリーズ「ボーイ☆スカート」は、
〝颯爽とスカートを履く男性〟を町で見かけて、それから自分も興味を持ちだした
桃井少年の物語。
着想はどんなところからだったんですか?
鳥野:これはですね、実体験です。
といってもあの「ムスカ似のおじさん(とアンケートで書いていただいた)」
を見かけたわけではなく、「桃井くん」みたいな年頃の、
スカートをはいた少年を見かけたんです。駅で。
その男の子がほんとうに、シャツにベストにスカート、ハイソックス、
ローファーというようないでたちで、またそれがすごく素敵だったんですよ。
ちょうど鬱鬱とした気持ちで電車を降りたら
そんな少年がホームにすごく自然に立っていて、
「ああ~、いいものを見た!すごくいいものを見た!」って。
それで「別に男子がスカート穿いて悪いことなんか一個もないのに、
なんでみんな穿かないのかな?」と思って。
もしも同じように疑問に思った男の子がいて、
「はきたい」と思ったなら「穿いて欲しい」と思ったんです。
「ボーイ☆スカート」に出て来るTDCの傘の乗り物。
わたしは高所恐怖症で落下系のアトラクションが苦手なので、
こどもの頃乗ってえらい目にあいました。
【近況】
編:最近はまっていることがあれば教えてください。
鳥野:シルクの5本指靴下。快適で手放せません。
編:好きなテレビ番組を教えてください。
鳥野:今期は朝ドラ見てます。「マッサン」のエリーちゃんが可愛くて可愛くて!
編:最近好きな漫画・本を教えてください。
鳥野:「グランド・ブダペスト・ホテル」という映画の
主人公のモデルになったという作家・ツヴァイクの短編集を……
ものすごい亀の歩みで……。
さいきんめっきり本が読めなくなって……。でもこの短編集は好きです。
あと積ん読状態ですが「亡命ロシア料理」(未知谷刊)を早く読みたいです。
本というか、仕事の合間に眺めているのは
「本当に旨いサンドウィッチの作り方100」(イカロス出版刊)です。
マンガはですね、さいきんというか、今年の8月に実に数年ぶりに
大好きな「ファンタジウム」(講談社/杉本亜未・著)の新刊が出まして。
生きてるといいことがあるな~と思いました。
あとずっと好きだった「ZUCCA×ZUCA」(講談社/はるな檸檬・著)が
完結してしまったのが寂しいです。
編:無人島にいくなら、鳥野さんは何を持っていきますか?
鳥野:広辞苑。
編:ありがとうございました!
(取材:11月某日)