恋愛未経験28歳女子の婚活を描いた
村上かつら先生『Hatch』完結巻となる第2巻
発売されました!


それを記念して、物語にぐっと踏み込むインタビューを敢行。
1・2巻をがっつり読んでから、このインタビューを読んでくださいませ!

hatch2_cover.jpg  定価980円
▲1巻のカバーイラストは喪服を着たのえみ。
今巻はウェディングドレスです。


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▲POPは書店用に描きおろし。

編集部(以下、編):「Hatch」2巻発売おめでとうございます!
          初の女性誌連載を終えられましたね。まずは一言お願いします。

村上かつら(以下、村):こんにちは、村上かつらです。
            はじめての女性誌、とても勉強になりました。
            ぜひまた挑戦したいです。


編:今まで恋愛をしたことがない28歳・のえみの物語が完結を迎えました。
  描かれていて印象に残ったセリフ・シーンはありますか?
  また、苦労された・工夫されたセリフやシーンなどもあればお聞かせください。

村:最終回です。
  限られた残りページ数の中で、どこまで描けるのか…

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▲最終話扉。

  おそらく、これまでの漫画家生活の中でも、
  最も描き直した回数が多いネームになったと思います。


編:入魂の最終話だったわけですね。
  恋愛未経験ののえみの相手として、迂野(結婚に向かない男)を配置したのは
   どういった理由からでしょうか。

  小夏いわく“(元カノが)結婚してくれなくて手放した”迂野は、
  結婚したいのえみにとってはハードルの高い男だと思うのですが…。

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▲気のおけない友人だからこその意見。

村:のえみは恋愛未経験だからこそ、
 結婚に向く・向かないを考えずに、
 見た目とか雰囲気で男性を選ぶと思いました。

  初恋に近い時代、誰もが通った道だと思います。

  そしてそれは、必ずしも不正解ではないとも思っています。
  結局好きにならなきゃ始まらないし、がんばれない。

  けれども、女も20代半ばを過ぎて、自分の「先」がある程度見えてくると、
  結婚相手に、より多くの「安心」を探してしまう…
  そこで脱落?したのが、1話しか出てこないけれど、迂野の元カノでしょう。

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▲迂野の元カノ。
 “住む”ことの定義が、ツリーハウスを作るのに夢中な迂野とはまったく違っていた。

  この、
 
「恋したい!でも安心もしたい!」
というジレンマにも触れたくて、
  迂野という、親や世間から見たらどうなん?、という男を配置しました。


編:このジレンマ、みなさん経験がおありなんじゃないでしょうかっ。
  そんなのえみと迂野はこの先どうなるんでしょうか?

村:一度付き合ってみてもいいと思います。


編:のえみはこの先、結婚する(できる)と思いますか?

村:できると思います。


編:では、村上先生がHatchの男性陣の中から結婚相手を選ぶとしたら?

村:選択肢少なっ(笑)
  1巻に出てきた、のえみのいとこです。
  既婚者なので、結婚の意思はあると思う。


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▲のえみの年下いとこ。すでに二児の父。

編:少ない中から選んで頂き恐縮です…!
  さて、今巻では、のえみ母の異常とも思える描写がいくつも出てきました。
  村上先生はこの人物をどのようにとらえているのでしょうか。
  また、こういった母親像のモデルなどはいらっしゃるのでしょうか。

村:1巻発売時のインタビューと重複しますが、
  編集さんに
  「結婚を描きたいなら、背後にある母娘関係を調べると面白いよ」
  とアドバイスをいただき、そちらにも注視して取材を進めました。


  のえみと母親の関係性を、ここまで前面に出す予定はなかったのですが、
  
  「どうして、こんなふつうの子に彼氏がいないの?」
  
  という疑問に対する理由付けをどうするか…という打ち合わせのときに、
  母親問題が浮上しました。



編:厳しい母親を描くにあたって、
  注意された、苦労された点などがあれば教えてください。

村:母親が娘の部屋を荒らすシーンは、
  絵的にはわかりやすいですが、自分の好みではなく、
  どちらかというと、のえみがつい、
  薬局で、無香料医薬部外品の日焼け止めを選んでしまうような、
  
  目に見えない母の影響力…

  
  みたいな場面をじっとり描くのが好きでした。


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▲1巻Act.6より。「母を不快にさせないこと」が、いつしか物事の判断基準に。

  「親が好ましいと思うもの」と「同世代ウケがいいもの」のズレは、
  ある可笑しさを伴って、子供の頃からずっと、気になっているテーマのひとつでした



編:最終話で、のえみが気付かぬうちに老いていた母の寝顔を思い出すシーンが
  とてもリアルで印象的でした。
  あの瞬間のえみの子ども時代がようやく終わりましたが、
  それからのえみと母の関係はどう変化していくと思われますか?

村:お互いが、一度離れることで、ふたたび「いい時期」が来ると思います。
  二度目のそれが、多少茶番じみたものでも、いいと思います。大人だから。


編:のえみの“Hatch”は開きましたか…?

村:ちいさな風穴は、あいたのでしょうか。

  最終回、最後の最後に、
  “Hatch”を、また別の訳で言い換えています。


  これが、本当に伝えたいメッセージにもなっているので、
  ぜひ探してみてください。


編:最後に、読者の皆様にメッセージをお願いします!


村:「Hatch」2巻、巻末におまけ漫画も描きおろしました。
  見かけたらぜひ、お手に取ってみてください。

  
1年間、ありがとうございました。


編:村上先生、ありがとうございました!
  さて、最後まで読んだらもう一度『Hatch』を
  読みたくなってきたんじゃないですか?
  
村上先生の本当に伝えたいメッセージ、お見逃しなく!


(取材:2013年4月某日)