小池田マヤ先生の大人気家政婦・里シリーズ
最新作『誰そ彼(たそがれ)の家政婦さん』発売を記念して
作中に登場するお料理のレシピを公開します!
収録作品それぞれのあとがきにも要注目。
それでは、小池田先生、よろしくお願い致します!

tasogare_kaseifu.jpg定価980円


小池田マヤです。
『誰そ彼の家政婦さん』をご購入くださった皆様、ありがとうございました。
前巻同様、レシピとあとがきを入れたかったのですが、
どうにもスペースがなかったのでこの場をお借りすることにしました。



作品解説とレシピ


「ヒーダボー/タッチング」
全然下手ですが手芸が趣味です。
手芸ものを以前から描きたかったのでページがもらえて嬉しかった。
ヒーダボーは難しくてすぐあきらめてしまいましたが、レースは写真を見るだけでうっとりです。
タティングレースはシャトルを操るのが新鮮でちょっとはまりました。
手を動かしているとトランス状態に入り思考がさまざまに羽ばたきます。
とくに心を内観して、過去のもうどうにも出来ない問題にぶち当たる時などは、
思い出してとても切ない。
でも手元で美しいものが手を動かした分だけ確実に出来上がっているのに気づき、
何度も励まされました。私の手芸は自分のためにです。
ウフ・ア・ラ・ネージュは小学生の時初めて買ったお菓子作りの本に載っていて、
私が一番最初に作ったお菓子なのです。とても懐かしい味。
震災後すぐに描いた話で、てこずりましたが優しい仕上がりになったと思う。

【ウフ・ア・ラ・ネージュ】

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材料
<メレンゲ>
卵白 2個分
砂糖 40g
塩、レモン汁 少々
<アングレーズソース>
卵黄 2個分
砂糖 70g
牛乳 250cc
<飾り>
ホワイトチョコレート 1枚
生クリーム 100cc

まずメレンゲ。
ボウルに卵白、レモン汁と塩を入れ、泡立てながら砂糖を2~3回に分け加え、
角が立つまでしっかり泡立てかたいメレンゲを作ります。
大きめの鍋半分に水を入れ湯を沸かし、沸騰したら火を止め砂糖大匙1(分量外)を溶かし、
水を追加で加え鍋八分目位にしたらレモン汁大匙1(分量外)を加えます。
これでだいたい60度くらいになるので極弱火でこの温度をキープします。
小さめのお玉、または大きいスプーンに泡立てたメレンゲをこんもり盛り、
鍋のお湯にそっと沈めます。

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ポコッとメレンゲがお玉からはずれるので、途中ひっくり返しながら
5分程度茹で中まで火を通します。ひっくり返しは形が崩れないようにそっとね。
茶漉しや豆腐すくいを使うとうまくいきます。
 

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茹でたメレンゲはざるや網にあげ水気を切り冷蔵庫で冷やして待機。
次にアングレーズソース。
ボウルに卵黄と砂糖を入れ白っぽくなるまでゴムベラですり混ぜる。
厚手の鍋に牛乳をいれ沸騰寸前まで温め、卵黄のボールに少しずつ加えながらよく混ぜます。
牛乳の膜が出来たら取り除いてね。全部とき合わせたらまた鍋に戻し、
ゴムベラで底から混ぜながらとろりとするまで沸騰しないように弱火で火を通す。
バニラエッセンスで香りをつけます。
大人向きにしたい人はここでいろんな香り付けをするといいです。
私はバニラとスパイスの香りがするキャプテンモルガンというラム酒を温め
アルコールを軽く飛ばして加えました。
アルコールはそのまま入れるとソースが分離することがあるので気をつけてくださいね。
熱いうちに漉し器に通してダマを取り、冷蔵庫か底を氷水にあてよく冷やす。
これだけでもいいのですがせっかくなので飾りを。
刻んだホワイトチョコレートをレンジで溶かす。
30秒ずつ様子見ながら2,3度かき混ぜながら溶かすといいです。
クッキングシートを折って小さい絞り袋を作り…がデフォですが、ジップロックの角を
はさみで切って使うと手軽だし、チョコが残って途中で固まっても
そのまままたレンジにかけれて便利です。
クッキングシートの下に細工模様の下絵を入れて下絵に沿ってチョコレート細工をします。
…下手でもいいの。こういうのは心意気。
割れないよう底の平らをキープしたまま冷やし固めます。

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お皿にアングレーズソースを注ぎ、少し泡立てトロっとさせた生クリームで
渦巻き模様を描き、竹串をひいて矢羽模様に仕立てます。
これもジップロックの角袋を利用すると便利です。
スプーンでただ丸く落としてひき模様にしてもハートになるので可愛い。
この辺は気分で適当に。冷やしたメレンゲを浮かべ、チョコ細工を飾り出来上がり。
ふわふわのメレンゲのやさしい口当たりを楽しんで下さい。


「ふにおちる」

しのぶもぢずりを描く気で予告カットのせましたが、
話が広がりまとまらず情けなくも減ページをお願いして急きょ変更した話。
万里さんは前から出そうと思ってた協会の上司と違う健全キャラになってしまったけど
これでよかったかも。漫画は生き物ですね。

【うずみ豆腐】こちら

【マグロのミ・キュイ】

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材料
生のマグロ柵 5㎝×10~15cm
白ゴマ 200g
みりん 大匙2
酒 大匙6
ラディッシュ 8個
<別添えまたはラディッシュにあえるソース>
醤油 大匙2
酒 大匙1
みりん 大匙1
わさび 小さじ2

有名シェフ、ドミニク・ブシェのレシピを元にしています。
うちに黒ゴマしかなかったので少々見苦しくてすみません。
マグロの柵を1センチ幅に切り分け拍子木に形をそろえます。
ボウルにみりんとお酒を混ぜ、マグロをまんべんなく漬け込み、
5分したらキッチンペーパーで水気を取ります。
皿にゴマを敷きマグロを転がし、長い方の4辺表面にゴマをまぶしつけ形を整えます。

クッキングペーパーを敷いたオーブン天板にマグロを並べ、
80度に熱したオーブンで扉を開けたまま、少し手前に皿を引き出した状態で10分、
生に近い半生に火を通します。

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ラディッシュを薄切りにして軽く塩をして水気を絞り、酒、しょうゆと
わさびであえて(オリジナルレシピはあえず別添え)、マグロに添えて出します。
マグロはミ・キュイでうまみが増し、ゴマがカラリと香ばしく、ラディッシュが爽やか。
ワインにもばっちり合います。簡単なわりに見目も洒落てて好きな一品。


「しのぶもぢずり」
牛乳瓶に挿してあったねじ花を見せて
「別名もぢずり草と呼ぶのよ。信夫もぢずりのように身を捩じらせてるでしょう」と
教えてくれたのは、高校の古典の先生でした。
なんてことない会話でしたが、まだ身を捩るような恋などした事なかった私でも、
わからないなりにとても艶っぽく感じられ忘れられなかった。
島根の来待ストーンミュージアムは昔、付き合ってた人とのデートでなんとなく立ち寄った場所。
展示の来待石の歴史を読んでた時、急に創造の電波をキャッチ。
その場で映画みたいにビジュアルつきで来待石を使った物語が頭に出来上がって驚いた。
降りてきた話はこの話とは違うけど、石灯籠について興味をもったきっかけです。
共に朽ちる石棺のようなパートナーシップの話はまた描きたい。

【タラの白味噌グラタン】

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材料
タラの切り身 1切れ
タラの白子 1パック
長ネギ 5cm位
長いも 2cmの輪切り位
シメジ 1/4パック位
スライスチーズ 1枚
山椒の葉 2枚(飾り)
<ソース>
白味噌 大さじ2
酒 大匙1
醤油 大匙1
生クリーム 大匙2~3


白味噌、酒、醤油、生クリームをよく混ぜ合わせソースを作っておきます。
ねぎ、長いも、しめじは洗って水気を切り一口大に切る。
タラと白子は軽く塩(分量外)をして少しおき、鍋に酒(分量外)を沸かし
タラと白子をひと煮立ちさせ、水気と臭みを抜く。
野菜とタラ、白子をグラタン皿に並べ、まんべんなくソースをかける。
細かく切ったスライスチーズをふりかける。
かけなくてもいいし、塊のチェダーやパルメジャーノを削ったチーズでもいいけど、
和風グラタンなので粉チーズやとろけるチーズじゃないほうがいいと個人的には思います。
200度のオーブンで焦げ目がつくまで焼いて出来上がり。
グラタンが焼きあがったら山椒の葉をパンと叩いて仕上げにのせます。
うちになかったのでかわりに冷凍しといた青山椒の実を砕いて焼く前にかけてます。
関係ないけど青山椒の実は出回る初夏に、たっぷりのお湯で煮て水を替え
もう一回茹で辛味を軽くしたものを冷凍しとくと、一年を通して使えて本当に便利です。おすすめ。
こってり気分じゃない時は、生クリームを牛乳に代えてあっさりも美味しい。


【豚肉梅煮】

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材料
豚ヒレ肉 1本
梅干 3~4個
酒 100cc 
醤油 大匙4
砂糖 大匙2
あればホースラディッシュ

豚ヒレ肉を鍋いっぱいのお湯で煮て一度水洗い。
あく抜きなので中まで火が通ってなくていいです。
酒、醤油、ちぎって細かくした梅ぼし、ヒレ肉を鍋に入れ、
ふたをして時々ひっくり返しながら中火でじっくり、今度は中まで火を通します。
でも茹ですぎると固くなるので気をつけて。
余熱で茹で上がるくらいで火を止め、荒熱を取ったらジップロックに汁ごと入れ、
空気を抜いて汁が全体にまわるように折りたたんでそのまま冷ます。
一時間以上、出来れば一晩漬け込む。
食べるときに好きな厚さにスライスして出来上がり。
練りわさびは辛すぎるので、出来ればホースラディッシュか
生の本わさびをすってたっぷり添えて一緒に。
そのままで十分おいしいですけどね。


【冬瓜と海老の煮物】

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材料
冬瓜 3L玉4/1
海老 10個程度
オクラ 8~10本
出し昆布 5cm位
鷹の爪 1本
醤油 大匙3~4
酒 50~100cc
みりん 大匙1~2

一応レシピ書きますが、漫画の通り適当に作ってOK。
海老は色が変わる程度にさっと下茹でして臭みをぬき、殻をむいて身と分ける。
出来れば有頭がよく出しが出ていいけど、無頭のブラックタイガーで十分。
気になる人は背わたを取り除いて下さい。
殻はそのまま炊飯器に入れてもいいけど、取出しが大変なので、
お茶パックか出し袋に入れるといいでしょう。
オクラはよく洗って縦半分に切っておく。
好きなサイズに切った冬瓜(里は仕事なので煮崩れ防止の面取りしてますがしなくていいよ)、
出し昆布、鷹の爪、海老の殻袋、酒、醤油、みりんを炊飯器に入れ、
冬瓜が半分浸るくらいの水を入れます。

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おかゆモードでスイッチオン。
炊き上がったらオクラを入れ追加で1分炊く。
殻袋を取り出し、食べる1分前に海老の身を入れ温めて出来上がり。
柚子胡椒やかんずりを添えます。
漫画では大根とするめバージョンも紹介してますが、
炊飯器や大根によってはおかゆモード一回では炊きが不十分なときもあるので、
その時はおかゆモードもう一回。
冬瓜はハムや鶏肉団子で塩コショウきかしたのも美味しい。
炊飯器煮は慣れるといろんな煮物が勝手にできちゃうので、はまりますね。


「ひあしのぶ」
いきつけの飲み屋のママにこの言葉を教わりました。「日脚伸ぶ」きれいな季語で感動した。
日々に気づかないけど確実に、畳の目一つ分ずつ日は伸びていく。
淡々と春を待ちたいです。

【野菜炒め】
火力強いコンロが使えるプロはともかく、
家庭での野菜炒めのコツは「炒めないこと」だそうですよ。
それぞれ食べる人に合わせた食べやすいサイズに切った野菜は、
調理中に水っぽくならないようにあらかじめレンジや蒸し器で八割火を通しておき、
フライパンでは混ぜて味をつけるのみ。後は余熱でジャストに。
味付けはどうとでも、それぞれの野菜が食べさせる相手の好きな歯ごたえに仕上がれば理想的。
里の得意料理…設定なので、これという決まったレシピは伏せますが、
どうか皆さんで想像して創造して下さい。
簡単なようですごく難しい。
失敗することの方が多いけど、作り続けたいと思います。

このシリーズも。

読んで下さってありがとうございました。
乾杯。

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どうぞ皆様、気持ちいい食事、いいお酒を。
またどこかで里を描いているのを見かけたら、手にとって下さると嬉しいです。

2012年11月某日 小池田マヤ